2026/08/31 10:00

うちの商品を、一度でも見たことがある人は、気づいているかもしれません。
あじの干物も、ベーコンも、たまごも、じゃがいもも、明太子も、カマンベールも、ナッツも。
しまいには、醤油や、マヨネーズや、塩まで。
素材はバラバラです。
魚があって、肉があって、卵があって、調味料まである。
ジャンルだけ見れば、ずいぶんバラバラです。
それなのに、うちが使っているチップは、いつも桜チップだけです。
素材ごとに、もっと合う木があるのかもしれない。
魚には魚の、肉には肉の、正解があるのかもしれない。
そう思って、他の木を試してみようかと考えたことも、一度や二度ではありません。
でも、結局、桜チップに戻ってくるんです。
理由を聞かれたら、答えはひとつです。
頭で選んだというより、香りで選んできた。それが、うちの理由です。
桜チップの煙を見ていると、なんとなく「これでいい」と思える瞬間があります。
逆に、他の木で試したときは、どこか落ち着かない。
香りが強すぎたり、逆に物足りなかったり、素材の顔が見えにくくなったり。
うまく言葉にできないけれど、「違う」と感じてしまう。





工房で燻している時間は、長いです。
魚を燻す日もあれば、ベーコンを仕込む日もあります。
塩に香りをつける日は、火加減も、待つ時間も、いつもと少し違います。
それでも、チップだけは選び直しません。
考えてみると、これはうちにとって、譲れない一本の線なのかもしれません。
素材が変わっても、商品のジャンルが変わっても、「葦束の香り」と呼べるものだけは、変えたくない。
毎回同じ木を選ぶことで、味も見た目も違う商品たちに、どこか共通するものが生まれる。それが、葦束の燻製らしさになっているのだと思います。




同じ材料を、ずっと使い続けるというのは、地味なことです。
新しい木を試して、新しい香りを見つけたほうが、話としては面白いのかもしれません。
でも、ものづくりには、変えないことでしか守れないものがあるのだと思います。
葦束の商品が、あじ干物からベーコン、調味料まで、これだけ幅広いのに、どこか「同じブランドの商品だ」と感じてもらえるとしたら。
それは、きっとこの桜チップのおかげです。
見た目も、素材も、食べ方も違う商品たちが、香りの部分だけ、静かにつながっている。
今度、うちの商品を並べて食べる機会があったら、少しだけ意識してみてください。
あじ干物も、ベーコンも、たまごも。
素材はまったく違うのに、どこかで香りが重なる瞬間があるかもしれません。
それは、偶然ではなくて、うちが毎回、同じ木を選び続けてきた結果です。
派手な理由はありません。
迷って、試して、それでも最後には同じ木に戻ってくる。
それが、葦束の小さくて、静かなこだわりです。


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