2026/08/24 10:00
工房の扉を開けたら、いつもの景色が少し変わっていた。
隣に、もう一台。新しい燻製器が並んでいた。
これまで葦束の商品はすべて、一台の燻製器で燻されてきた。呼び名は零号機。あじの干物も、ベーコンも、たまごも、この一台がひとつひとつ受け止めてきた。毎日使うからこそ見えてくることがある。ここがもう少しこうだったら。この動きがもっと楽だったら。そうした小さな気づきが、使うたびに積み重なっていった。
2026年7月9日、そこに新しい仲間が加わった。
零号機よりひと回り大きな、初号機。工房内では、そう呼んでいる。燻製器職人が手がけた新型で、零号機を使い続けてきたなかで積み重なった気づきが、そのままかたちになっている一台だ。並んだ二台を前にして、しばらく手が止まった。
大きく変わったのは、二つ。ひと回り大きくなって、一度に燻せる量が増えたこと。そして、庫内の密閉度が上がって、煙が外へ逃げにくくなったこと。零号機を使い続けてきたからこそ見えてきた、小さいけれど確かな改良だ。
初号機は、もちろん正真正銘の新品だ。それでも、そこに詰まっているものは、決して新しいものだけじゃない。
零号機には、毎日使ってきた跡が残っている。初号機は、まだどこも新しい。並んでいる姿を見ると、不思議と先輩と後輩のように見えてくる。
2台体制になってから、工房の動き方も少しずつ変わってきた。これまでは順番にしかできなかった燻製が、今は二台で同時に進められる。温燻と冷燻、それぞれ違う燻し方を並行して。地味だけれど、大きな変化だ。作業の順番を組み替えたり、二台をどう使い分けるか試行錯誤したり。慣れるまでにはもう少し時間がかかりそうだけれど、その試行錯誤自体が、なんだか楽しい。
増えたのは、台数だけじゃない。できることの幅と、これまで積み重ねてきた時間だ。
道具は、使うほどに「こうだったらいいのに」を教えてくれる。そしてその声は、ちゃんと次の道具に受け継がれていく。零号機が積み重ねてきた時間が、初号機というかたちで工房に戻ってきた。そう思うと、この二台の並びが少し誇らしく見えてくる。
これから先、この二台が燻すあじの干物やベーコン、たまごが、少しずつ皆さんの食卓に並んでいくはずだ。
最新情報はInstagramやLINEでも発信しています。
インスタグラム ⇒ https://www.instagram.com/kunsei_ashitaba/
LINE ⇒ https://lin.ee/9Bycfk9
