2026/08/10 10:00
扉を開けると、
まず潮の匂いが届きます。
今日は少し湿った風。
昨日よりも波の音が近く聞こえます。
葦束の工房は、壱岐の海の近くにあります。
燻製の話をする前に、今日はこの場所の話をさせてください。
朝、扉を開けて最初に届くもの
工房の一日は、匂いから始まります。
桜チップに火を入れる前に、まず窓を開けて、外の空気を確かめる。潮の匂い、少し湿った朝の空気、遠くから聞こえる漁船のエンジン音。
海の色は、日によって違います。
晴れた日
は、深い青。
曇った日は、少し灰色。
同じ海のはずなのに、
毎朝、違う表情を見せます。
そういう場所で、私たちは燻製を作っています。
便利さより、続けたい景色を選んだ
正直に言うと、壱岐の中でも工房の場所として考えられる土地はいくつかあったと思います。でも私たちが最後に大事にしたのは、効率や便利さではありませんでした。
毎日そこにいて、その景色を好きでいられるかどうか。
潮の匂いを吸い込む朝が、苦にならないかどうか。
海のそばで暮らし、
海のそばで作る。
そういう時間の流れの中に身を置きたい。
そんな気持ちが、この場所を選ばせたのだと思います。
数字や条件だけでは測れない理由が、そこにはありました。
港と、暮らしと、この場所であること
工房から少し歩けば、港があります。魚を水揚げする人、運ぶ人、店に並べる人。海のそばにいると、そうした島の暮らしの流れの中に、自分たちも自然と混ざっていけるような感覚があります。
最近は、島にあるさまざまなものを少しずつ燻しては、香りを確かめる実験もしています。まだ商品になる段階ではありません。でも、この場所だからこそ出会える香りが、きっとあると思っています。
工房を作る場所を選ぶことは、仕事場を選ぶことでもありますが、毎日暮らす場所を選ぶことでもあります。毎日そこにいて、その空気を好きでいられるかどうか。そのことのほうが、実は長く続けていく上で大事なのだと思います。
葦束の工房が海沿いにあるのは、条件がよかったからではありません。海と共にある暮らしを選んだ結果、自然とこの場所にたどり着いた。そんな感覚に近いものです。
今日も、扉を開けると潮の匂いが先に届きます。
その空気の中で燻したものが、あなたの食卓にも届いたらうれしく思います。
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