2026/08/07 10:16


地中海に浮かぶシチリア島。強い日差しが降り注ぐ昼から、夕暮れへとゆっくり空の色が変わっていきます。照りつける太陽と乾いた土が育てたぶどうが、この島の食卓へ運ばれていきます。「島を旅する食卓」第1回で訪れるのは、そんなシチリア島。グラスに注ぐのは、造り手Colpassoが手がけるネロ・ダーヴォラです。長崎県壱岐島で燻製づくりを続ける葦束が、この一本に自家製の燻製ベーコンを合わせて、島から島への夜を旅してみたいと思います。

同じ土地で造られたワインでも、造り手が違えば味わいはまったく別の顔を見せます。今回の主役は、ネロ・ダーヴォラというぶどう品種そのものではなく、「Colpasso」という造り手の個性です。

同じ島、違う造り手

シチリアには数多くの造り手・ワイナリーがあり、同じネロ・ダーヴォラという品種でも、誰がどう造るかによって表情は驚くほど変わります。Colpassoは、その中でも有機栽培や持続可能な生産者との協働を大切にしている造り手のひとつです。古くからの造り方をそのまま守るというより、そこに現代的な感覚を重ねているのが特徴だといいます。壱岐で燻製を作る私たちも、同じ島、同じ素材からでも、作り手によって仕上がりが変わることをよく知っています。だからこそ、この造り手の個性に注目してみたいと思いました。





爽やかで、ぶどうの存在感が強い一杯

2024年のColpasso Nero d'Avolaは、見た目は深いルビー色でしっかりした赤ワインの印象ですが、飲むと意外なほど軽やかです。グラスの中でブラックチェリーやプラムのような熟した赤い果実の香りが広がり、スパイスや土っぽいニュアンスも感じられます。フルボディながらタンニンはなめらかで、酸味のバランスがよく、余韻も長め。ブドウそのものの存在感が強く感じられる、爽やかな一杯です。





燻製ベーコンと合わせたくなる理由

今回、葦束の燻製をいくつか合わせてみたところ、一番しっくりきたのが燻製ベーコンでした。葦束の燻製ベーコンの脂の甘みとコクを、Colpassoの酸味がすっと受け止めてくれる感覚があります。なめらかなタンニンは燻香とぶつからず、果実の爽やかさが後味を軽くしてくれるので、脂の重さが残りにくいのだと思います。「赤ワインだから合う」というより、この一本の酸とやわらかさが、燻製ベーコンの香ばしさとちょうどいい距離感だった、という感覚に近いです。




初夏の夕方、グラス片手に

おすすめしたいのは、日が長くなってきた初夏から夏にかけての夕方です。まだ明るさの残る時間に、壱岐から届いた燻製ベーコンを軽く炙って皿に並べてみてください。炙ると脂がじんわりと溶け出し、燻香がふわりと立ち上がります。そこにColpassoを一杯。地中海から吹く風を思い浮かべながら、グラスを傾けてみてください。品種の教科書的な話をしなくても、「同じネロ・ダーヴォラなのに、造り手が違うとこんなに印象が変わるんだ」と感じてもらえたら十分だと思います。壱岐の燻製とシチリアの一本が、同じ食卓の上で静かに並ぶ。この旅は、まだシチリアの途中です。次回は同じ島で生まれた白ワイン「グリッロ」とともに、もうひとつの食卓を訪ねます。今夜はその入口として、この一杯を試してみてください。


今回のペアリングのポイント

爽やかでブドウ感の強いColpasso Nero d'Avolaは、なめらかなタンニンと酸味のバランスが特徴。葦束の燻製ベーコンと合わせると、脂の甘みを酸味が受け止め、燻香とタンニンがぶつからず、後味が軽やかにまとまります。初夏〜夏の夕方、軽く炙ったベーコンとともにどうぞ。


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